第三の呼吸は喜怒哀楽の感情に伴って変化する呼吸です。
我々は緊張したり、不安があると、呼吸は乱れ、早くなります。
気分がリラックスしているときには呼吸はゆっくり落ち着いています。
この情動(心の動き)により変化する呼吸を「情動呼吸」と読んでいます。
私たちには常に楽しい、うれしい、悲しいなど感情の変化が起こります。
この感情、あるいは情動の変化が呼吸に伴って起こっています。
しかもその呼吸は頭の中の情動をつかさどる中枢で生まれている、
というのが最近の我々の研究の成果なのです。
ネガティブな情動の中で不安を研究の対象としてみました。
この不安という情動は脳の最も深いところ、
大脳の内側にある大脳辺縁系の中の扁桃体という
アーモンド形をした脳で作られています。
その扁桃体の活動が呼吸に伴って出現していた、ということです。
その呼吸に乗って不安の活動が生まれてきますので呼吸が
早ければ早いほど不安も強くなります。
昔から、不安になったときには深呼吸をすると楽になる、といいます。
呼吸がゆっくりになれば、それだけ不安の活動の出る回数も減るのです。
意識して、ゆっくりとした呼吸をしてみてください。少し落ち着くはずです。
不安はストレスからくることが多いのです。
その対応の基本は呼吸です。
意識してしばらく呼吸をゆっくりしてみるとよいでしょう。
○ストレスが呼吸を狂わせる。
ストレスが高まると、第3の呼吸の脳が活動し胸が固くなると共に、
呼吸筋から脳へとつながる感覚神経が過剰に反応してしまい、
呼吸筋の働きを狂わせてしまいます。
○呼吸のSOS!
現代人に多い、第3の呼吸の異常
COPDや気管支ぜんそくなど呼吸器の異常ばかりでなく
第3の呼吸中枢の異常である
過換気症候群、パニック障害などが増えている。心理的ストレスが大きな原因。
○呼吸困難感からの解放へ。
・息苦しさは、生き苦しさ。軽減すれば、生活の質もあがります。
呼吸困難感は、身体に生じる感覚のひとつです。
・ではその呼吸困難感は、なぜ起こる?
そのメカニズムは、いろいろです。呼吸困難感のメカニズムでとして、
我々は「中枢ー末梢ミスマッチ」説を唱えています。
・そのミスマッチを改善する方法は?
イルカ活動が児童の心理、呼吸、脳にどのように
影響およぼすかを研究しています。
イルカと触れ合っている時は呼吸数は増えていますがイルカと
触れ合い活動後は状態不安度のスコアが低下、呼吸数が減少、
脳波のスローウェーブ(θ波+α波)が増加し扁桃体の
活動が弱まりました。
その結果、不安度を低下させリラックスした状態を作り出しています。
イルカ活動は気持ちを落ち着かせることに有効であるといえます。
○嗅覚は呼吸と特別な関係
嗅覚の入力には視床を介するだけでなく他の経路も存在するのです。
直接大脳辺縁系の扁桃体に行く、短い経路です。
これは動物にとって危険に対する素早く対応するのに役立っています。
良い香りをかいだときには呼吸数はゆっくりになり、
いやな香りをかいだときには呼吸数は増えています。
随意的にゆっくりした呼吸をしているわけではないので、
呼吸の化学調節は働いており、
呼吸の深さも同時に変わり、体にCO2がたまったり、
少なくなったりはしません。
したがって、アロマにより気持ちを落ち着かせるのは良い方法です。
スポーツではよく、動作を合わせることを「息をあわせる」
という表現をしますが、本当に息は合っているのでしょうか。
そして、息を合わせると心理的にはどういったことが
おきているのでしょうか。
動作を合わせて行う団体競技、女子新体操、と動作を
合わせない団体競技、ラクロスの選手に協力をしてもらい、
呼吸パターンと不安感について研究を行いました。
新体操選手はラクロス選手に比べ不安感が全員とても高く、
そしてCO2を負荷したとき呼吸数の変化のばらつきが非常に小さく、
呼吸パターンが似ていることがわかりました。
新体操競技において選手間の「呼吸をあわせる」ということの大切さを
示していました。ただ、そのため、心理的な負担が大きく、
結果として不安度が高まっていると考えられます。
○情動呼吸と日本の伝統芸能
能における心の表現は、外からは見えない内面の心が表現されている。
不安や悲しみなどの情動変化が、すべて呼吸に伴って表現される
能のシテ方は、呼吸を変化させることをとおして、
脳の深いところから生じる情動を表現している。